2014年1月5日日曜日

事例研究:新宿駅の例

新宿駅に初めてやってきた人が切符を買って電車に乗るまでに必要な日本語を見ていきましょう。

まずは、新宿西口交番でJRの改札方面を尋ねます。JR新宿駅から中央線に乗りJR八王子駅に向かうことにします。
KOBANとローマ字で標記されていますが、結局のところ「交番」の意味が分からなければなりません。

窓口があるので、JRの切符が買えそうですが、ここでは買うことができません。
この窓口の機能を理解するためには次の言葉の意味が分からなければなりません。

東京都 交通局 案内所
[東京都]は[千葉県]、[北海道]という地名であるという意味だけではなく、[交通局]との複合語となり[東京都交通局]が地下鉄であるということと、[案内所]がインフォメーションセンターであるという理解が必要となる。
特に、「案内所」は意味を決定する重要な語彙である。

<案内表示板の英語に従ってJR方面へ向かいます>
JR線方面への移動については、英語標記に頼ることも可能です。

<みどりの窓口に到着>
みどりの窓口の隣に英語標記で"Ticket Office"と書かれています。
ここで切符を購入する場合は、音声言語によるコミュニケーションを行なわなければなりません。
しかしながら、学習者のレベルによっては困難が予想される。
さらに、窓口付近に掲示されている情報で「出口」と書かれているところを読み取らなければ正確に列に並ぶ事ができず、結果として横入りしてしまう可能性が生じてしまうだろう。
みどりの窓口の隣に英語標記で"Ticket Office"と書かれています。
ここで切符を購入する場合は、音声言語によるコミュニケーションを行なわなければなりません。
しかしながら、学習者のレベルによっては困難が予想される。
さらに、窓口付近に掲示されている情報で「出口」と書かれているところを読み取らなければ正確に列に並ぶ事ができず、結果として横入りしてしまう可能性が生じてしまうだろう。



この標記は日本語のみ標記であるため、明日以降の指定席券や特急券を購入しようとする場合、購入する時間帯によって窓口が異なっていることを理解しなければなりません。
ここできちんと理解できなければならない日本語は「地下1階」をきちんと理解しなければ目的の場所にたどり着くことができません。さらに「明日」、「以降」ですが特に「以降」は明日を「含む」ものか、それとも、「含まない」のかは「以後」との使い分けによって認識しなければならない。

「当日分の指定券は1階下の窓口をご利用ください」と書かれていますが、そうするとここの窓口では一体どういった種類の券を購入することができるのかいささか不明確である。
その2とあわせて、「きっぷ(切符)」、「指定券」という意味を正確に理解していないと難しいであろう。つまり、広義の「きっぷ(切符)」は指定券も含む可能性もある。
さらに、複雑にしているのはこの掲示には複数の情報が書かれていることである。「窓口をご利用ください」という切符の購入を窓口で行なうことを促す文に加え、券売機コーナーを使うことも同時に促す文も書き込まれている。そのため、この掲示を読んだ非日本語母語話者はどうすればよいのか却って混乱してしまう恐れがある。

<券売機のところまでたどり着いた>
券売機を見つけました。
「現金」、「のみ」の理解が必要となります。
日本語がわからなくてもTicketという英語標記に頼り乗車券を購入することができると思い、お金を入れてみますがそもそも、目的地までの料金がわかりません。
しかし、ここで英語でticketと書かれていても購入することのできる乗車券は限定的なものです。
中央ライナー、青梅ライナーという特急に乗るためのものになっています。
目的地である八王子は「中央線」に乗って行くことになるのですが、「中央」という文字を認識することで、中央線と推測することも可能です。さらに、「ライナー」は「ライン」と類似するため「中央ライナー」と「中央線」を混同する可能性は高いと考えられます。

券売機を押してみると、自由席特急券という文字と行き先が表示されます。
特急券という語がわからないと、誤って購入してしまう恐れがあります。
JR新宿駅に止まる中央線には「快速」、「通勤特快」、「中央特快」、「特別快速」などがあり、「特急」との混同の可能性があります。
こちらが、英語での運賃表と路線図です。新宿駅のような大きなターミナル駅では、こうした英語版の路線図が掲出されていますが、一般的な駅では見かけることがありません。
ここで八王子までの運賃がわかり、その直下にある券売機で切符を購入することになります。
しかし、その路線図の下には「新幹線、特急指定席、定期券」とあります。
ここで購入する事ができるのは新幹線等の乗車券であるということを理解しなければなりません。
つまり、シニフィアンとしての路線図とそれに対応するシニフィエとしての券売機の機能が一体化していないため、普通乗車券の購入が難しくなっています。
その隣にある券売機の上には「指定席・自由席券売機」と書かれています。
ここで問題なのは英語標記の路線図が不適切な位置に掲示されていることにより、混乱を生じさせる恐れがあるということです。

<改札に向かいます>
乗車券が購入できたら改札に向かいます。
そこで、「入場券」が必要という掲示が見えてきました。一般的に入場券とはゲートを通過する際に支払うものですが、電車には乗らないが駅に入るだけという人のための券であるという特別な意味が付加されています。しかしながら、「入場券」が一般的な語彙であるために誤解を生じさせることになります。
さらに「通過」という語も、「改札を通過するだけで、電車には乗らず、もう一度改札から出てくる」という意味として解釈されなければなりません。

<ホームに向かいます>
改札を通過した後に、自分が乗るべき電車が来るホームには、英語標記に従うことで向かう事ができます。
(倉林秀男)