2015年2月23日月曜日

台湾のサインの特徴(地名の表記を巡って)

台湾は2014年に外国人観光客数が990万人を突破し、観光客収入が1兆6000万円を超えており(台北駐日経済文化代表処発表資料に基づく)、この数が年々増加傾向にあります。そのため、台湾は観光客増加を狙い様々な宣伝を行っておりますが、ここでは台湾の言語景観についてみていきます。

台湾も日本と同じ漢字圏にあり、漢字で書かれたサインは非漢字圏の言語話者にとっては認識しにくいサインであるといえます。これは日本人がアラビア語を読むことができないのと同じです。いわゆる文字体系が異なっているためです。従って、文字体系が異なっている場合は基本的にアルファベットでの表記が併用されます。
これはバスの行き先別にルート番号(バスの先頭に書かれている番号)を示しているものです。地名とそれに対応する英語名称が併記されています。そうすることで、漢字が読めない人にとっても理解ができるようになります。
これはおそらく日本と同じですが、一つ大きな違いがあります。それは台北の電車のルートマップです。
たとえば、行天宮にはXingtian Temple、善導寺にはShandao Temple、大安森林公園はDaan Parkという英語での表記になっています。そこで日本の類似する駅名と比較してみましょう。そうると、東京メトロの水天宮前駅はSuitengumae Station。JR善光寺駅はZenkoji Station、埼玉県の森林公園駅はShinrin-koenとなっています。つまり、日本語では地名のローマ字表記で対応することになっています。一方、台湾では宮や寺をtemple、公園をparkと翻訳をしています。これは、宮や寺の意味を正確に伝えることができ、観光客にとってはそこに何があるのか推測することが可能です。しかしながら、SuitenguやZenkojiなどはそれが寺社であることがその音から推測することは日本語が理解できる人にしかできません。
つまり、台湾の地名の英語表記は台湾人に向けてではなく、外国人のために表記されており、その地名の持つ意味を伝えようという趣旨が伺えます。一方、日本の地名表記は最近になって、「国会前」をKokkai maeからThe National Dietと表記を変え意味を伝えるような動きにはなっていますが、主要都市の駅名の表記は未だローマ字読み表記のままとなっています。この場合の表記はいったい誰のために向けて書かれているのでしょうか?

(倉林秀男)